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Magazine/ ニュートラをめぐるテキスト

Column

2023.04.28 (fri)

ニュートラをさがして
ものづくりを再考し、ともに創造の芽を育んでゆく

文:水上明彦(さふらん生活園園長)

さまざまなものづくりの実践者が“NEW TRADITIONAL”を綴る「ニュートラをさがして」。第十二弾は、愛知県名古屋市の福祉施設・さふらん生活園園長の水上明彦さん。デザイナーとの協働によるラグマット製作から見えてきた、人の手を感じられるものづくりとは——。

さふらん生活園(SFRN)におけるクリエイターとのものづくりのはじまりは2021年1月。「NEW TRADITIONAL展 in 常滑」に心を動かされた筆者が、展示のディレクションをしていたデザイナーの高橋孝治氏に声をかけ、当施設にクリエイティブデイレクターとして参加してもらったことが発端である。

福祉施設にデザイナーが入る場合、商品パッケージの再考など、「どういうふうに見せるか」という部分にフォーカスされがちだが、高橋氏とは「障害のある人のものづくりの魅力」「ケアの本質」などを俯瞰した視点でとらえることに重きを置いた。それにより「見せ方ではなくあり方」が施設内で問い直されたことは大きく、多くの気づきがもたらされ、それらはキーワードとして言語化されていった。

アート活動とは違って、当施設でのものづくりにおいては、従来より「きれいに・まっすぐに」が第一の価値として存在していた。しかし、ディスカッションでリフレーミングを繰り返し「ゆらぎ」「個体差」「不揃いでもいい」のキーワードまで行き着いたのだ。

障害のある人のものづくりは、人が生得的にもっている“つくる喜び”を感じる営みであり、個体差がありゆらいでいるからこそ、つくり手の顔を想像したくなったり、愛着をもって長く使ったりしてもらえるのではないか。そう考え、消費一辺倒の現代社会に対して、人の手によって素材を形にしていることがわかるプロダクトをつくりたいと、その後は高橋氏の旧知でテキスタイルデザイナーの森田明奈氏にもチームに加わってもらうことに。そこから、施設の既存製品であるマットをブラッシュアップするための協働がスタートした。

森田氏が着目したのは、愛知県一宮市の織物工場で、ウール生地の生産過程に廃棄される「捨て耳」と呼ばれる端材。それを生かし、「素材感が表れたラグマットを製作するのはどうか?」と提案を受け、仕入れ先も紹介してもらった。そして、施設の倉庫に35年もの間眠っていた、「フラミンゴ」(回転整経式手織機)という、長尺かつ幅広の織物をつくることができる機械を復活させ、試作をすることになる。

縦糸の素材選びやフリンジの仕上げにかかる工夫等々、1年半の試行錯誤が続いた。もちろん、メンバーが織って製作していくのだが、既存のマットとは違い、圧倒的に手直しの必要がない。メンバーとスタッフが、ほぼフラットな関係性で仕事を進められることも大きな発見であった。織り上がったものは一度洗濯することで縮絨(フェルト化)し、その風合いとともに隙間が埋まりラグとして成立する。

2022年12月に開催された「ニュートラ展 in 京都」への出展を皮切りに、共感を寄せてくれる売り手とも出会うことができ、現在テストマーケティングを展開中である。今後もウールラグのプロジェクトは深化し、農夫が畑を耕すように、創造の芽をメンバーとスタッフがゆっくりと育んでいくであろう。

水上 明彦(みずかみ・あきひこ)

2000年さふらん生活園入職。2013年より同園長。「じっくり」(時間)、「ま、いいか」(寛容)、「感性」(美的センス)が交錯する福祉施設でのものづくりや表現が、日々を生きるヒントになるのではと試行錯誤中。
さふらん生活園(SFRN)Instagram @we_are_sfrn

photo: Akiko Griffith-Ota

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2023.04.28 (fri)

ニュートラをさがして
「ヒト」「モノ」「時間」の関係を考えるNEW TRADITIONAL

文:森野彰人(京都市立芸術大学工芸科陶磁器専攻教授)

さまざまなものづくりの実践者が“NEW TRADITIONAL”を綴る「ニュートラをさがして」。第十一弾は、京都市立芸術大学工芸科陶磁器専攻教授の森野彰人さん。福祉と伝統工芸のものづくりに芸術大学が関わることを通して、「藝術」がもつ本来の意味について考えます。

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2022.05.30 (mon)

ニュートラをさがして
工芸がもつ確かさによって、未来が更新されていく

文・山崎伸吾(ディレクター)

さまざまなものづくりの実践者が“NEW TRADITIONAL”を綴る「ニュートラをさがして」。第十弾は、伝統工芸の技術やありようを、多彩なプロジェクト・企画を通し発信するディレクターの山崎伸吾さん。近年の「物」への社会意識に対する、ものづくりのアプローチとはーー。

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2022.05.30 (mon)

ニュートラをさがして
伝統と新しい発想、遊びを大切に切りひらいていく

文・山根大樹(NPO法人おりもんや)

さまざまなものづくりの実践者が“NEW TRADITIONAL”を綴る「ニュートラをさがして」。第九弾は、障害のある人たちと、織物を通して協働するNPO法人おりもんやの山根さん。日々の活動を振り返りながら、伝統の織物づくりから見えてきた、現代における「仕事」のあり方について考えます。

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2021.05.01 (sat)

ニュートラをさがして
それをしないでは居られない人

文・川﨑富美(プロダクトデザイナー)

さまざまなものづくりの実践者が“NEW TRADITIONAL”を綴る「ニュートラをさがして」。第八弾は、プロダクトデザイナーの川﨑さん。最近ある理由で絵を描きはじめたという川﨑さんが、福祉施設との協働を通して見出していったものとはーー。

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2021.05.01 (sat)

ニュートラをさがして
竹細工を通して見る、ものをつくる喜び

文・引地一郎(ワークプレイス ハイホー 管理者)

さまざまなものづくりの実践者が“NEW TRADITIONAL”を綴る「ニュートラをさがして」。第七弾は、鹿児島の福祉施設「ワークプレイス ハイホー」の引地さん。地域の素材や文化、技術に目を向け、障害のある人たちの得意を生かすものづくりとはーー。

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2021.02.01 (wed)

ニュートラをさがして
手と機械、情報ネットワークが織りなすクラフトの未来

文・川崎和也(Synflux主宰/スペキュラティヴ・ファッションデザイナー)

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2021.02.01 (wed)

ニュートラをさがして
産地・つくり手・使い手のつながりをつくり出す柔軟な姿勢

文・井上愛(NPO法人motif代表)

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